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【医師が解説】漢方と肌

「皮膚は内臓を写す鏡」と言われるように、肌荒れとカラダの不調とは深く関わっています。

本記事では、ニキビの原因や漢方薬での対処法などを解説します。

したがって体全体を見て治療に取り組む漢方医学的なアプローチで、肌のトラブルが改善することも少なくありません。

 

今回は東洋医学をベースに漢方の診療の基本的な考え方を基に、肌荒れに対する処方を紹介します。

 

1, 肌荒れとは・・(漢方医学的な視点から)

カラダの重要な構成成分の気・血・水のバランスが乱れ、慢性化することによりその一症状として肌荒れが出現すると考えられています。

 

2, 漢方の診療とは・・

漢方は、カラダに不足している「気」を補い、「血」の巡りを良くし、不要な「水」を出すことで、気・血・水のバランスを整え、個々の患者に合わせた薬の処方を用い身体の不調を改善する効果が歴史的に証明されています。

 

3, 肌荒れに効果的な漢方薬

① 「気の異常」による肌荒れタイプ
「気」とは生命エネルギーのこと。これが不足している状態を「気虚」、気が逆流している状態を「気逆」、気の流れが滞っている状態を「気滞」と呼びます。

 

気虚; 代表処方は補中益気湯で、胃腸を丈夫にして温めて免疫力を高める効果があります。加齢や栄養状態の低下などで皮膚が弱くなるのは、気虚による一症状と考えます。

補中益気湯と十全大補湯は、構成生薬に人参と黄耆を含む強い補気作用を有する薬です。

 

気逆;代表処方は桂枝湯で、上半身に集中している気を温めることにより下半身にも巡らせ、肌荒れ以外にも頭痛・動悸・めまい・ゲップなどの症状も改善することがあります。

 

気滞;代表処方は半夏厚朴湯や柴胡加竜骨牡蠣湯で、気をバランスよく巡らせストレスの改善を図ることが知られています。

 

② 「血の異常」による肌荒れタイプ

「血」は血液に似た概念のこと。皮膚にいく血液が不足していることを「血虚」、血液の流れが悪い状態を「瘀血」と呼びます。

 

血虚;代表処方は四物湯や人参養栄湯で、貧血などを改善し気力や体力を回復させ皮膚の乾燥や冷えを改善し効果をしめします。

 

瘀血;代表処方は当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸で、皮膚の血液の循環を良くします。肌荒れにはハトムギの成分を加えた桂枝茯苓丸加薏苡仁が用いられることも多いです。黒ずんだニキビに特に効果的なことがあります。

 

③ 「水の異常」による肌荒れタイプ
「水」はリンパ液、胃液、唾液など、「血液」以外の水分のこと。全身の水のバランスが悪い状態を「水毒」と呼びます。

 

水毒;代表処方は五苓散で、むくみ、口渇など「水」のアンバランスを改善し肌荒れに効果を示します。

 

④ その他肌荒れによく処方される漢方薬
十味敗毒湯;毒素を排毒することにより、背中やお尻など、体にできるニキビに効果的なことが多いです。

黄連解毒湯;炎症で赤くなったニキビや湿疹の熱を冷ま(清熱)して、炎症を鎮める効果があります。
八味地黄丸;高齢者の肌荒れには地黄剤の入った漢方が有用なことがあります。

 

いかがだったでしょうか??肌荒れを漢方医学的な視点から解説しました。

 

「気」「血」「水」いずれの異常か判断することは大切ですが、原因は一つでないことが多く、単一の処方で効果が得られない場合は、薬の変更や組み合わせが必要になることもあります。

 

漢方薬に含まれる構成生薬には副作用がほとんどないため、妊婦や高齢者にも比較的安全に使用できます。また、漢方診療は病名処方ではなく体質改善の薬の側面をもつため、肌荒れに使用した漢方が、他の症状も改善することもしばしば経験します。興味がある方は、是非試してみる価値はあるでしょう。

 

<著者プロフィール>

名前;吉川博昭
経歴;帝京大学医学部卒業
現職;豊中緑ヶ丘病院 麻酔・ペインクリニック科 部長
資格取得;日本ペインクリニック学会認定専門医・医学博士